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だからこそ、われわれは確率を重視しなければならないのだ

「保険は確率の商品」

私が会った生保レディはまじめで誠実そうな人だったので、私を脅かして説得するために脳梗塞の話をしたのではなかったのかもしれない。たまたま自分が受け持った顧客の中に、本当にそういう人がいたために、親切心から出た言葉だったのかもしれない。だが、脳梗塞の全年齢の平均入院日数と、脳梗塞に倒れたというその顧客の入院日数がピッタリ一致していたことが、今でも引っかかってもいるのである。何度も言うように、保険は確率の商品なのである。


「生存率や治癒率」

たとえばがんの治療に関して言えば、ステージ(がんの重傷度)ごとの5年生存率という確率が付いてまわる。手術にしても放射線治療にしても成功率や総功率といった確率が問題になってくる。がん以外でも病気が治るかどうか、薬が効くかどうかといった問題は、すべて確率でしか論じられない。絶対ということはないからである。さらに言えば病院ランキングや名医ランキングといったものも、その根本にあるものは確率だ。がんや心臓病の治療では、病院の実力によって生存率や治癒率が大きく左右されることを、今では誰でも知っている。


「確率が高い病院や医師のリスト」

さらに同じ病院でも医師の能力によって違いが出てくることもよく知られている。病院とか名医とかのランキングは、治療成績がいい、言い換えれば治してもらえる確率が高い病院や医師のリストであるということである。だからみな少しでも確率の高いところに行こうとするのではないか。しかも確率には個人差がある。たとえばメタボリックシンドロームの患者は健常者と比べて心臓病や脳卒中に罹るリスクが10倍高いと言われている。


「健康も確率の世界」

あくまでも確率の問題なのだ。医療だけでなく健康も確率の世界である。いまの話で言えば、タバコをやめれば肺がんのリスクが減る。肥満でいるよりは標準体重に落として方が生活習慣病に罹りにくい。食事の減塩に気をつければ高血圧の確率が下がるとされている。そのほか何十種類ものサプリメントが健康にいいものとして、つまり病気になる確率を飲まれ続けている。


「最終防衛ライン」

このように健康、医療のあらゆるところで確率が顔を出してくる。そのなかで医療保険は、いわば最終防衛ラインと言うべきものである。さまざまな健康法を実践し、まじめに健診や人間ドックを受け、それでも病気に罹って入院や手術が必要になった時に、その経済的負担(の一部)を保障しましょう。というものである。保険会社のCMなどには、まるで医療保険に入れば病気に罹らないかのごとき表現を使っているものである。しかしそんなことがあるわけではない。毎日ウォーキングをすれば生活習慣病に罹るリスクを下げる効果が期待できる。


「ギャンブルの時」

確率は保険会社が商品価値を設定するためだけに使われるものではない。当然、われわれが自分に合った医療保険を考えるためにも役立つ。つまり、われわれにとってのニーズそのものなのである。よく保険はギャンブルに似ていると言われる。自分が死ぬか生きるか、病気になるかならないか、いつそうなるともしれないものに賭けるからである。そう言ってしまうといささか乱暴だが、保険はギャンブル的要素が強い商品であることは誰も否定できない。ギャンブルは幸運な人に配当があり、保険は不運な人に配当がある。

春は保険料の動きに要注意

「脅かし文句」

人の生き死にや病気を確率で論じることを不謹慎だと思われる方もいるかもしれない。「あなたの年齢でこのい病気に罹る確率はかなり低いですよ」と言われても、実際に罹ってしまったら自分にとっては文通り100%の事態だからである。先ほどの心臓がんにしても、現実に毎年数十人の方が発病し、命を落としている。私は、医療業界で長年生きてきたから、そういうことは十分にわきまえているつもりであり。ただ、保険に関して言えば、この主張がしばしば消費者に対する脅かし文句に使われていることも否定できない事実だ。


「医療保険」

私は1年ひど前、ある医療保険に加入しようと考えたことがある。そこでその会社の生保レディに会って、いろいろお話を伺った。その際に私は、健康診断で血中総コレステロールがやや高めなことをつげた。すると、生保レディは突然、「脳梗塞は怖いですよ」と言い出した。彼女が担当した顧客のなかに私と同世代の男性がいて、その人が脳梗塞に罹ったというのである。


「脳梗塞のリスク」

確かにコレステロールが高いと脳梗塞のリスクが上がる。しかし私の場合、高いと言っても正常値をやや上回っている程度だし、この年齢(48歳)で脳梗塞に罹る確率はさほど高くない。私の年齢の男性が、向こう10年間に脳梗塞に罹る確率はせいぜい1%だ。この数字を私は十分に低いと判断した。さらに言えば、私くらいの年齢では、脳梗塞の平均入院数は50日程度である。平成14年の厚生労働省の調査では、脳梗塞の平均入院日数は107日、つまり4ヶ月近くになっている。しかしそれは全年齢の平均であって、年齢が下がれば入院日数も減るのである。


「保険に入るニーズ」

仮に私が運悪く脳梗塞に倒れたとしても、4ヶ月間も入院する確率はかなり低い。私はそういう計算に慣れているので、頭の中でたちまち確率を考えることができた。私が脳梗塞の長期入院を心配して保険に入るニーズは、いまのところ低いのである。そこで生保レディび向かって、「しかしこの年で脳梗塞の心配をする必要はあるのですか」と尋ねたところ、彼女は大真面目に「でも、実際にそうなってしまったら、その時は手遅れですから」と答えたのであった。

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